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能楽師とスーツアクター

表情のない面の、傾け方ひとつで、寂しさや喜びを表現する彼らの技能は、能楽師にも匹敵すると思う。能楽師に「面をかぶっていれば誰でも同じ」とは誰も言わないのに、と、ずっと悔しく思ってきた。
(YOMIURI ONLINE「真の主役はスーツアクター」より)
岡元次郎さんのTV出演に関する記事ですが。やはり能楽師のくだりで違和感が生じて悶々としています(笑)
最近佐藤氏に関するニュースもないことだし、しっかりまた考えてみようかと思った次第。それでもスーツアクターさんに関する資料は電王関連しか手持ちがないため偏りがあると思われます。

どうしてスーツアクトに「能」の例えが頻繁に出されるのか。
共通しているのは「面をつけるので役者の表情が見えない」という点。ならば能楽じゃなくても、仮面劇でも舞楽でもいーじゃん、いーじゃんってことになる。
何となく「能楽」を出しておけば敷居の高い高尚なものに思えるから、などという理由だったら拍子抜けなのだが。

>能楽師に「面をかぶっていれば誰でも同じ」とは誰も言わないのに
能楽師は、自分で型をつける(動きや振りをつける)ことは基本的にしない。寂しさを表現するために手を沿え顔を傾けるのも、喜びを表現するユウケンという手を動きも既に決められている型であるから。
それに対してスーツアクトは一からそのキャラクタに合った動きを演じる。(またはアクションの殺陣をつけてもらう。)表情が使えない分、全身で感情を表現する。
これって演じるアクターにとって感情を表現する技能という面ではまったく異なると思うし、実際に能を演じることとスーツアクト(私の場合は着ぐるみ)は別物だったから。
技能:物事を行う技術力の能力。うでまえ。[旺文社国語辞典]
能楽師の技能:型の美しさ、謡いの表現能力
スーツアクターの技能:身体表現能力

それから、能は年齢を重ねて「枯れ」が味となるのが、スーツアクトはアクション体力が必要な以上「若さ」は武器でもある。高岩さんが10年後もヒーローでありたい!と言っていたけど、能楽師が10年後も義経を演じていたい!とは決して言わない。



「誰でも同じ」という見方は、むしろ観客の意識ではないだろうか。

能楽師は演目(パンフレット)にシテ方、ワキ方、後見にいたるまですべて「名前」が載るのに対し、TV番組のスーツアクターさんは役名イコールとはならない。(モモファンとしては、劇場版みたいなクレジット、関さん高岩さんの並列表記が一番嬉しい)
能楽は同演目であっても違う役者違う流派が演じ、その個性や違いを楽しむ側面があるし、何よりも”声”が使える。演じる人が違えば、おのずと印象は異なるものだから、あえて「個性を出そう」とは思わない。
逆にスーツアクターは様々な制約から、中の人を感じさせない、あえて名前を出さない。「誰でも同じ」は没個性の結果でもあり(だってショッカー各人に個性があってもねえ・・・。でもキャラづくりの際には癖付けをしてあえて「個性を出す」ように演じている)、またある意味褒め言葉でもあるのではないかと。
ちょっと意味合いが違うかもしれないが、電王のプラットフォームは佐藤氏演じる野上良太郎が入っていると信じて疑わなかった人がいるというのは最大の賛辞だし。


仮面をつける=マスクをかぶるだとしても、演じる技能は能楽師≠スーツアクターである。が私の持論。
むしろ西洋の仮面劇を例えに出してくれたほうが合っているんじゃないのかなあ。。しっかし、仮面劇、雅楽、歌舞伎、京劇、能楽。。。考えることがいっぱいだ(笑)

あと以前のエントリーでも言っているけど、マスク(仮面)だからこそどんな表情にも変えられるというのは、どの仮面劇にも共通する魅力だと思う。何度見ても電王44話のモモタロスの表情には圧倒されるばかり。
Commented by maki at 2009-04-09 11:40 x
遊さん、こんにちは。やはり別物なんですね。
たぶん例えている方は「それだけ男子が一生かけて惜しくない高みを目指してるんだ」みたいなことが言いたいのだろうと思います。
でもおっしゃる通り、あまり詳しくないものを詳しくないまま持ち出すと、変なことになりそうですね。
Commented by at 2009-04-09 12:32 x
こんにちはー。すみません、私makiさんのブログへのトラックバックの方向を間違えた気がします。慣れないもので失礼しました。

先細りに見える能は(若手の方たちが色々試行錯誤しているようですが)歴史だけはありますからね。それこそ人間国宝がゴロゴロと(笑)
高岩さんたちの凄さを目にするたび、もっともっと役者としての知名度や地位が向上すれば、畑違いの能なんか例えに出さなくても良くなるのかなあと思ったりもします。50年後、100年後、たくさんの役者さんが高みを目指した結果がきちんと形として確立しているといいなあ。
Commented by maki at 2009-04-09 17:03 x
方向ですか?いやちゃんとトラバいただいてると思いますよ。ありがとうございました。

あと、スーツアクトも、一応型らしいものがあるといえばあるんです。同じ演目をやらないから、「アギトの型」「電王の型」ではなく、もっとあいまいで汎用性高い「ヒーローの型」みたいなものが。
それを高岩さんも岡元さんも若いうちは学んで来て、でも、それでは役そのものの感情につながらない(汎用性高すぎて)ということから型を壊し始めたことが、今につながるんですね。スーツアクターと呼ばれ始めたのはその頃の話です。
「ディケイド」ではめったにない過去ライダーの再演が見られるので、
「これを高岩さん以外がやったらどうなるか?」みたいな楽しみはありますよ。
Commented by at 2009-04-09 19:16 x
「ヒーローの型」を壊す、ですか。なんとも奥が深い世界で踏み込んだら抜けられなさそうです(笑)
能は研究対象としては系統だっているので解りやすいですが、スーツアクトは多岐に渡りすぎてなかなか捉え難いような気がします。

どんな演劇にしても、基本となる「型」はやっぱりあるのですね。それを壊してみたり、身体に染みこませてはじめて次に進めるステップが見えてくるというか。ヒーローの型があるのなら、怪人の型とか興味津々!
ディケイドでは、まだスーツアクターさんの動きよりも変身効果音と変身ポーズに心がときめいている現状ですが、ちょっとずつ過去ライダーを勉強中です。
by takemancyanpan | 2009-04-09 09:50 | Suit Act | Comments(4)